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私は「人が好き」なんだと思う —日常の中に、私の仕事がある。
木津さん
私は、たぶん「人が好き」なんだと思います。 特別な理由があるわけじゃなくて、毎日の仕事をしているうち…
もっとみる私は「人が好き」なんだと思う —日常の中に、私の仕事がある。
私は、たぶん「人が好き」なんだと思います。
特別な理由があるわけじゃなくて、毎日の仕事をしているうちに、そう感じるようになりました。
私は、大分県で2番目の女性バス運転士です。
きっかけは、友人からの一言でした。大分で初めて女性のバス運転士が誕生した、という新聞記事を見た友人が「木津さんも行ってみたら?」と、軽い感じで声をかけてくれたんです。
当時は大型ダンプに乗っていて、正直、「私には無理やろうな」と思っていました。
でも心のどこかで、「別大国道を、バスで走ってみたいな」という気持ちもあって。
不思議なもので、そこからご縁やタイミングが重なり、翌年の4月に入社が決まりました。
この仕事をしていると、私はいつも、人の日常のすぐそばにいるなと感じます。
咳をしたら、後ろの席から飴玉をもらったり。
馴染みの路線に戻ると、「木津さん、久しぶりやね」と声をかけてもらったり。
寝落ちしてしまった小学生や、深夜のサラリーマンを、そっと起こすこともあります。
ルームミラー越しの一瞬の情景から、いろんなことが伝わってきます。
今日はスーツ。――面接かな。
昨日はつらそうやったけど、今日は元気そうやな。
二駅前で降りたのは、歩きたい気分やったんかな。
そんなふうに、勝手に想像しながら運転しています。
ある日、未就学の兄弟が、停車ボタンで競争していました。
行きも帰りも、お兄ちゃんが先に押してしまって、下の子はとうとう泣き出してしまいました。
私はそっとランプを消して、下の子が押すのを待ちました。
「ピンポーン」
降りていった二人は、バスが見えなくなるまで、ずっと手を振ってくれて。
あの時の、涙の跡が残ったままの笑顔は、今でもはっきり覚えています。
私は、あと2年で定年を迎えます。
「まだ2年あるな」と思う日もあれば、「もう2年しかないな」と思う日もあります。
バス運転士は、私そのもの。
“人が好き”というのも、たぶん私そのもの。
天職やったな、と思いながら、この仕事を、あと2年だけ。
ゆっくり、楽しもうと思っています。




